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超初級 材料工学

楽器の音響工学

 「音」って、なにでしょう?

 音の性質を知れば、楽器の構造が理解できます。吹奏楽は、この「音」を合わせて奏でる「合奏」が基本です。音と響きの基礎を覗いてみましょう。

〇 金属素材

 金属素材は、基本的にはいろいろな金属を混ぜた合金を用います。中には、純度を高めた純銀、純金などもありますが、かなり高価になるため、鍍金などの材料ではよくありますが、本体の無垢材としては、あまり使われていません。

名称
画像
特徴
使用部位
白金(プラチナ)(Pt)
耐腐食性も高く、硬い 希少性が高く、極めて高価で使いにくい 比重 21.45g/cm3  ブリネル硬度 392MPs
比重は、一般的金属で一番重い。且つ、硬い。その特徴がそのまま音色となる。純金製のフルートにわざわざプラチナ鍍金をする人もいるほどである。
金(ゴールド)(Au)
伝導性が高く柔らかい。比重は銀より重い 耐腐食性は最も高く、装飾性も華やかである。 比重 19.32g/cm3  ブリネル硬度 25MPs
比重の重さが音色に出る。 銀よりも華やかな音色になると言われている。また、キイやポストなど、装飾的にも華やかである。
銀(シルバー)(Ag)
伝導生が高い銀白色で艶やか 耐腐食性は高いが、塩素、硫黄、臭素、硝酸とは反応が高く、皮脂月いたまま放置すると、黒ずむ事がある。 比重 10.50g/cm3  ブリネル硬度 25MPs
硬く、比重が重いので、楽器の素材に適していて多用される。単体での使用の他、メッキ処理で表面の耐腐食性と硬さで音色に変化を付けたりできる。
銅(カッパー)(Cu)
熱伝導性が高く柔らかい。伝導率が高いが、腐食性が高い。また有害でもあり、単体で使われることは少ない 比重  8.95g/cm3  ブリネル硬度 874MPs
真鍮の主な成分。銅の配合を変えることで、レッドベルと呼ばれる、赤い真鍮のトランペットがある。
すず(Sn)
融点が低く、柔らかい 耐腐食性が高い 黒みがかった銀色で艶やかである。鉛害が少ないので、鉛の代替えとして使われる。 比重  7.30g/cm3  ブリネル硬度 51MPs
細かな装飾的加工を施す 金属同士の接合のロウ付けの材料 半田は、鉛とすずの合金である
鉛(Pb)
柔らかく融点が低い 防振処理として用いられたが、鉛害が指摘され、現在ではほとんど使われない 比重 11.33g/cm3  ブリネル硬度 38.3MPs
金属同士の接合のロウとして、半田の成分として使われる。また、防振材、防響材として使われた。
亜鉛(Zn)
耐腐食性が高く白みがかった銀白色 単体で使われることは少ないが、合金として多用される 比重  7.15g/cm3  ブリネル硬度 412MPs
真鍮(ブラス)の成分
ニッケル(Ni)
耐腐食性が高く、硬い 色は、多少黒みがかった銀色で、艶やか 金属アレルギーを起こしやすいので、あまり使われない 比重  8.9g/cm3  ブリネル硬度 700MPs
安いトランペットなどの、鍍金処理 安い木管楽器等のキイやポストの防さび処理としての鍍金

〇 木素材

名称
画像
特徴
使用部位
8.リード(葦)
葦の茎の部分を、木管楽器の振動材として使う。濡れると柔らかくなるが、反発性が振動板として使われる。
木管楽器のリード クラリネット、オーボエ、ファゴット、サックス
7.孟宗竹(竹)
外形は硬く、中は空洞なので、叩けば良い音がする。外形は水につけると柔らかくなり、乾くと硬くなるので、その性質を利用して、様々な加工がなされる。
パーカッションの鍵盤打楽器、反響筒、尺八
6.チェリー(桜)
木目が綺麗で繊細なので、装飾にも用いられる。 比重 0.65   硬さ  硬い
音響機器の外箱 制振材、ラック
5.ツゲ(樿)
非常に硬く、加工技術が要求される。日本では、櫛の材料として有名         硬さ  非常に硬い
4.メープル(楓)
硬いが軽いので、大型木管楽器に用いられる事が多い。 比重 0.7     硬さ  硬い
ファゴット メーニッヒのオーボエ
3.ローズウッド(紫檀)
マメ科の木で、東南アジアに育つ。わずかにバラの香りがすることで、ローズウッドと呼ばれる。ローズウッドと呼ばれる種は多く、紫檀と同種ではない。 比重 0.9~1.0   硬さ  非常に硬い
木管楽器の管体 フルート ピッコロ オーボエ
2.エボニー(黒檀)
カキノキ科 果物の柿の仲間で、東南アジア等熱帯地方で育つ。色が黒く年輪差が少なく緻密で、高級仏壇などにも使われる。 比重 1.2~1.3   硬さ 非常に硬い
木管楽器の管体 フルート ピッコロ クラリネット 音響機器の制振材 音響機器の箱、ラック、仏壇
1.グラナディラ(アフリカ黒檀)
豆科の木で、薄茶色の周辺部と黒色の中心部でできていて緻密で比重が重い。音の響きが強く、音響機器、楽器に多用されるも、資源の枯渇化で、もう良質な物が取れない。 比重1.4 硬さ、はるかに硬い
木管楽器の管体 フルート、ピッコロ、クラリネット、オーボエ他、音響機器の制振材

 管楽器は元々は、竹のような管状の物から発展してきたと思われますが、緻密な材質が良い響きが得られることから、比重の思い、グラナディラの様な木に代わってきました。ただ、グラナディラのような比重の大きな材質は、一般的に硬く加工がしにくいことから、高度な加工技術が要求され、また、近年、良質な木材が枯渇して、非常に高価な物となってきています。

〇 合金素材

名称
画像
特徴
使用箇所
洋白(洋白2種) 銅65 ニッケル18 亜鉛12
真鍮より硬く、加工がしにくい。 耐腐食性が高く、鍍金処理をしなくても錆びにくい。 バネのような伸縮に優れている
トロンボーンの抜き差し部分のストレート管 木管楽器のキイ、キイポスト、連結棒等、 ピストンのバネや、木管の棒状バネなど。
洋白(洋白4種) 銅66 ニッケル10 亜鉛24
真鍮より硬く、加工がしにくい。 耐腐食性が高く、鍍金処理をしなくても錆びにくい。 バネのような伸縮に優れている。
トロンボーンの抜き差し部分のストレート管 木管楽器のキイ、キイポスト、連結棒等、 ピストンのバネや、木管の棒状バネなど
真鍮(レッドブラス) 銅90 亜鉛10
真鍮の中では最も硬いので、加工は難しい。 また、銅の成分が多いので、錆びやすく、金属アレルギー等もあり、ポピュラーではない。
トランペット等のベルの部分に使われる。硬い材質のため、音色が繊細で、柔らかく感じるので、音色を重視する場合に使われる。
真鍮(ゴールドブラス) 銅85 亜鉛15
強度的には、レッドブラスに継ぎ、色合い的には、金(ゴールド)に近いので、華やかである。
トランペット等の管体や、ベルの部分に使われる。 音色的にはちょうど中間で、繊細さからパワフルまで幅広い音色とされている。
真鍮 (イエローブラス) 銅70 亜鉛30
柔らかくて加工しやすいので、管の部分やベルの部分に最適である。
トランペット等、金管楽器の本体に最も使われている。 柔らかい材質の特徴で、メリハリのある音が特徴です。

〇 金素材

 金素材は、古くから加工がしやすく、腐食等がないのでよく使われています。ただ非常に高価なので、使用箇所は限定されます。質量が大きいので、音を反射しやすいので、フルートなどの管内壁にメッキすると、豊かな響き効果が得られます。

名称
画像
特徴
使用箇所
K10WG(金41.6 銅、ニッケル)
質量があり、柔軟性伸縮性反発性が高いので、線バネに使われる
木管楽器のキイバネ
レッドゴールド(金75 銀100 銅150)
赤みの強い色となり、色合いの変化を求めるときに使う。硬度もあるため、表面処理に用いられる。 硬度 150MPa 比重 15.3
洋白、真鍮等の表面保護としての鍍金
イエローゴールド(金75 銀150 銅100)
純金よりもかなり黄色が強く、華やかである。 硬度 120MPa 比重 15.5
洋白、真鍮等の表面保護としての鍍金
ホワイトゴールド(金75 銅150 パラジウム100)
プラチナよりは、白みを帯びている。金合金のなかでは最も金に近い性質で、加工しやすい。 硬度 12.5MPa 比重 15.9
フルートなどの管体 木管楽器のキイ、キイポスト、連結棒 金属部分の表面保護しての鍍金
ピンクゴールド(金75 銀50 銅180 パラジウム20) 
金合金の中では硬く、色合いも柔らかく人気がある。 銅の成分が多いので、多少腐食しやすい 硬度 150MPa 比重 15.2
フルートなどの管体 木管楽器のリガチャー 木管楽器等のキイ、キイポスト、連結棒等 金属部分の表面保護としての鍍金
K24(純金)
非常に柔らかく加工しやすいが、傷も付きやすい 耐腐食性は非常に強くい 部品としては、重さを求める 硬度 22MPa 比重 19.3
フルートの管体・口金部 ライザー リッププレート ヘッドキャップ ヘッドバランス 木管楽器のリガチャー 金属部分の表面保護としての鍍金
K18(金含有率75%)
金合金の中では最も硬く、かつ金の特性を持つ組み合わせです。 圧倒的な柔らかさとなめらかさが、人気だそうです。
フルートの管体・口金部 ライザー リッププレート
K14(金含有率58.3%)
一般的には抵抗があり吹きにくくなるが、柔らかな音色は特徴で、好んで使われる事が多い。
フルートの管体・口金部 ライザー リッププレート
K9(金含有率37.5)
 他の金属との組み合わせにもよるが、軽い金属と掛け合わせれば、総銀製より軽くすることができる。音色を華やかにかつ、演奏しやすいと人気がある。
フルートの管体・口金部

〇 銀素材

 銀素材も、金素材同様、古くから装飾を中心に使われています。質量も真鍮よりも重いため、音の反射をしやすく、金ほど高額ではないので楽器の管体、メッキ等によく使われています。

名称
画像
特徴
使用箇所
Ag1000(銀含有率99.5~100)
0.5%程度特殊金属を混ぜ強度を強度を持たせている 離れて効くと柔らかくまとまりが良い音色になる、ソロステージ向き
フルート管体
Ag950(銀含有率95)
柔らかで広がりのある透明感 と言う音色らしい
フルート管体 トランペットベル部
スターリング(銀含有率92.5)
イギリスの銀貨で、一番硫化しにくい特徴がある。 艶やかでパワフル、広がり感がありながら芯がある 音色らしい
フルート管体 サックス管体 クラリネット、サックスのリガチャー
コインシルバー(銀含有率90)
一般的な銀貨の総称 比較的安価で、銀の特徴を味わえるので、広く使われている
フルート管体 トランペット管体 木管楽器のキイ、ポスト、連結棒等

〇 白金素材

 白金素材は、もともとレアアースで貴重且つ高額ということと、加工が難しいという面で使われるようになったのは、ここ最近である。質量が金より重くより音の反射(響き)を求める場合に使用されることもある。

​ フルートの三響が、プラチナ1000のフルートを世界で2本だけ作ったと記録があります。

名称
画像
特徴
使用箇所
Pt1000(白金含有率100)
純プラチナとは言っても、0.1程度ルテニウムを混ぜて強度を保っている。最も硬く重い材質で、繊細、最小音量から最大音量までのダイナミックレンジが広いが、抵抗感も相当なレベルで、上級者向きである。 比重 21.5 
フルート管体 リッププレート フルートスピード
Pt950(白金含有率90)
宝飾としても、深みのある銀色で好まれている。 比重 20.0 
フルート管体 リッププレート フルートスピード
Pt900(白金含有率75)
純白金よりも硬くするため、パラジウムを混ぜるけど、近年パラジウムの方が高価になり、純白金よりも高価である。加工しやすいので比較的広く使われている。 比重 19.0 
フルート管体 リッププレート フルートスピード

〇 樹脂素材

 古くから塗料として、松ヤニ系の天然樹脂塗料(ニス)などが使われていましたが、近年、素材としてはABS樹脂などが一般に使われるようになりました。

名称
画像
特徴
使用箇所
ポリスチレン樹脂
柔らかく、伸縮性がある。
プラスティックリード(オーボエ・クラリネット・サックス)
フェノール樹脂
世界で始めて作られた人工プラスティックである。 絶縁性が高く、古い電機製品のケースに使われることがい。型に入れて焼き固め比較的安価に作られる。
木管楽器のマウスピース
エボナイト樹脂
天然ゴムを加硫して硬化させた物で、天然素材 型にはめて加硫し固めてから加工するという手間が多いが、変型や、湿度に強いので、地味な部品として使われる。見た目が黒檀(エボニー)に似ているから命名された。
木管楽器のマウスピース 万年筆のボディ
ABS樹脂
硬く、加工しやすいが、接着加工がしにくい。アクリルニトリルの強度、ブタジエンのゴム特性、スチレンの光沢性を併せ持ち、多くの用途に使われている。
木管楽器の管体

〇 新素材

新素材は、貴重なグラナディアの枯渇問題から急に発展してきました。木製楽器はどうしても湿気やカビ等により、「割れ」などを生じます。その為、保管管理が大変で、屋外演奏などは厳しい環境となります。そういった面からも「新素材」の開発が求められています。

名称
画像
特徴
使用箇所
天然木合板・熱圧高密度合板
まだ研究段階であるが、国産天然木を熱圧処理で合板とし、削り出して楽器とする試みがある。
研究中
合成木(黒檀粉末)
Jマイケル社が販売している中国製の新素材 黒檀粉末を樹脂で圧熱処理したもので、管体は型に入れて成形しているので、黒檀の木目が再現されている。
Jマイケル オーボエ OB-1500       ピッコロ PC-400
コンポジット材
マリゴ社が開発した、上部管のみコンポジット 製法を講評していないので、分からないが、クランポン社同様、音色に大きく影響していないらしい
マリゴ オーボエ 901C     オーボエM2
合成木(グラナディラ粉末含有)
ビュッフェ・クランポン社が開発した、グラナディラ粉末95とカーボンファイバー5を混ぜて圧熱処理した新素材。均一で高密度、湿気等の影響を受けにくいので、素材としてはむしろ理想的である。
クランポン製クラリネット、オーボエ

〇 表面保護材

表面保護は、元々は真鍮の腐食を防ぐ目的で施工されていました。その後、素材の硬さや質量が音の反射「響き」に影響することが分かり、メッキという手法で表面に施工されるようになりました。

元の金属(無垢材)との組み合わせで音色が変わるとも言われ、洋白製管体に銀メッキというオーソドックスな物から、銀性管体に金メッキとか、極めつけは、プラチナ950製管体にプラチナ1000メッキというレアな物も存在します。

​ 無垢材は、実は細かな金属結晶が詰まっていて、単結晶ではありません。そこにメッキ処理することで、表面は均一な単結晶に近い構造となり、細かな振動を吸収せず、各日に音を伝導する効果があります。

Title
画像
特徴
使用部位
ノンラッカー
真鍮が全体に錆びてつや消しとなり、ビンテージ感が出ます。真鍮本来の繊細な音色になると言われます。 皮脂等で変色をコントロールできるが、それ故,お手入れが難しい
ホルン、サックス、トランペットなど
ラッカー塗装(ブラック)
見た目のインパクトを狙って、黒を混ぜています。特性、音色はあまり変わりません。
サックスなど
ラッカー塗装(ゴールド)
真鍮の色を、より金(ゴールド)に近づけた色合いで、華やかですが、特性、音色はあまり変わらない。
トランペット、サックスなど
ラッカー塗装(クリア)
真鍮地金にエポキシ系、ウレタン系透明ラッカー塗装 吹きつけ、静電塗装など、 柔らかいので音の抜けがよく吹きやすい。
トランペット等、真鍮製管楽器のほとんどに使われています。
ニッケル鍍金(NP)
安価なトランペットなどに使われ、耐腐食性は高いが剥がれやすい。アレルギーを起こしやすいと言われる
トランペットの抜差管のストレート部など、音色と装飾として使われることが多い。
プラチナ鍍金(PTP)
非常に重く硬いので、非常に抵抗が高く吹きにくいです。相当パワーを欠けて吹く上級者向けです。
フルートにはプラチナ750本体にプラチナ鍍金というモデルまであります。
ピンクゴールド鍍金(PGP)
銅が多いので、金よりは柔らかな音色になります。表面が硬いので、趣旨が当たる部分の保護にも使います。 見た目が柔らかく、女性に人気です。
サックス本体 木管楽器のキイ、ポスト、連結棒等
金鍍金 ゴールドプレート(GP)
銀以上に、比重が大きいので、鮮やかで華やかな音色になります。さらに抵抗があります。
トランペットのベル部 マウスピース
銀鍍金 シルバープレート(SP)
ラッカーより、表面は硬く薄く比重が大きいので、クリヤーで柔らかい音になるが、その分抵抗が高い。
トランペット、ユーフォニアム 木管楽器のキイ、ポスト、連結棒等
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