優子 トロンボーン担当
優子(ゆうこ)
北海道の遠軽町で小学校から、コルネット、トランペットとやってきたが、2年の時、両親の都合で静岡に移住し、転入してきた。顧問の三田はその技術を買って、トロンボーンの立て直しと金管全般をサポートさせるために、トロンボーンに楽器変更させた。
大自然の中のびのびと生きてきたこともあり、細かいことは気にしない、大きな声と態度で王道を走るタイプである。その思いと行動は、トロンボーンと見事に融合し、吹部の音を低音域から支えていくこととなる。
男の子にもへこたれず、逆にけりを入れ返す、じゃじゃ馬「道産子」であるが、実は心の中は打たれ弱いのである。親の都合である物の、文化も言葉も気温も違うまるで異国の地にひとり置かれる状況は、突っ張っていなければ自分自身が倒れてしまうのでは無いかという恐怖心を抑えるためであったのである。このままでは自分が倒れちゃう、困ったと思ったとき、人を蹴る....いや、トロンボーンでぶっ放す。このバランスで保たれていたのである。
山田中サウンドは、優しく音が小さい。吹奏楽よりも管弦楽のようである。もともと顧問の三田が、クラッシックが好きである事が影響されているのであろう。テレビなので吹奏楽部を紹介する番組で流れるような有名な、吹奏楽ポップスなどは、演奏させてもらえなかった。でも、それでは嫌だ。そのためには、パート毎、ちゃんと音が取れるようにし、音を大きく且つ倍音豊かな音色にしなければならない。そうしなければ、大好きな「吹奏楽」サウンドが吹けない。そんな思いで、パートをまとめ、金管全体をまとめようとしていくのである。
優子の目には、故郷の心のシンボル、願望岩があった。
いつも優しく見つめてくれた「願望岩」。「バカヤロー」って叫んでみた「願望岩」。「この音届け!」とトランペットで音を向けた「願望岩」。街を出るとき仰いだ涙にかすれた「願望岩」。
そして、その思いは、実は顧問の三田も同じだったのである。優子はいつも、指揮台の三田の後ろにあるであろう「願望岩」に向けてトロンボーンを炸裂させていたのである。そしてその思い、いや「音」は、うるさいほど三田の心に響いていた。
※ この物語は、とある、地方中学校を舞台に繰り広げる、無謀かつ純粋な挑戦の記録です。
※ ストーリー全体はフィクションでありますが、一つ一つのエピソードは実話を基に、アレンジをして書かれています。
※ 登場する実在の学校、団体、個人等と、全く関係・関連はありません。
※ この作品「めざせ!東海大会♪~ある吹奏楽部の挑戦~」は、著作物であり、版権は著者に依存します。無断転載、転用はお断りします。
※ 原作者(著者):ホルン太郎 なお、この作品は、取材で集めた実話をヒントに新たに書きおろしたフィクションです。
※ この作品は、一般市民団体「まちなか演奏会実行委員会」によって公開されています。